【Webと評論・批評のこれから】今年の振り返り【アレ★トーク(6)】

〈アレ★Club〉のメンバーがGoogle Hangoutで行っている日々の雑談の中から、「一匙の公共性」がありそうなものを「さいむ」が勝手に書き起こし、他のメンバーのチェック無しで記事化する「アレ★トーク」。今回は年の瀬ということもあり、〈アレ★Club〉メンバーで飲みながら今年一年を振り返りました。

前回:【「クッパ姫」は「姫クッパ」にすべき?】語法と誤用について【アレ★トーク(5)

★本日の登場人物
・山下泰春
〈アレ★Club〉代表。

・堀江くらは
『アレ』および「コレ!」編集長。

・市川遊佐
〈アレ★Club〉副代表。

・永井光暁
〈アレ★Club〉事務局長兼『アレ』副編集長。

・さいむ
〈アレ★Club〉のWeb担当および文章校正担当。

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◆「Tik Tok」から見るWebの繋がり

さいむ:
皆さん、今年も一年お疲れ様でした。2018年も残りわずかですが、皆さんは今年一年を振り返ってみて、何か気になるコンテンツはありましたか?

市川:
例えばだけど、今年は「Tik Tok」がメチャクチャ流行った。僕はやっていないんだけど、CMとか動画を見てもどういうものなのか全く分からなくて、逆に気にはなってる。

山下:
「Tik Tok」は、簡単に言えば短いダンス動画を撮影・共有できるアプリ。でも、僕もあれがどうしてあれだけ流行っているのかは分からない。あぁ、また時代に取り残されていく……。

くらは:
「Tik Tok」が流行っている最大の理由は、手軽に流行に乗ることができて、なおかつ手軽に共有できるという点にあると思う。実際、他のSNSを見ても、「Instagram」の「ストーリー」のように「共有しやすさ」を重視したものが流行っているから。

市川:
でも、ぶっちゃけた話、「Tik Tok」や「Instagram」には「出会える」みたいな、誰かと親密に繋がれる要素はないよね。

くらは:
「Tik Tok」だけだと相当難しいね。現状、ああいうアプリは「弱い繋がり」を前提として作られているから、「強い繋がり」については他のSNSに任せているというか、勝手にやってくれている感じ。

市川:
「出会えない系アプリ」だ……でも、「出会わ(え)ない」というのは重要な要素だと思う。千葉雅也さんや宇野常寛さんも指摘していることだけど、繋がり過ぎることによる弊害はあるだろうし、最近の対人コミュニケーションについては「どうでもいい場所(人)とは繋がらない」という風になってきている。

山下:
「出会い過ぎるのはよくない」という考えが広まってきているから、文字ベースでやり取りをするSNSでも「話を聞いてくれるだけのただの他人」が必要とされてきている感はあるね。

♦SNSの今後

さいむ:
SNSは今後、どんな風に使われていくのが望ましいでしょうか?

山下:
僕は人間の流動性を高める方向に進むのがいいんじゃないかと思ってるよ。例えば、人々が交流してイベントが作られていくというのは、SNSの使い方としてアリだと思う。ウチが毎月〈みずうみ〉さんでやっている「ものを書くための、読書会」も、今ではそこから『アレ』への書き手さんが出てきたりしているしね。

くらは:
ただ、流動性を高めることだけを目標にするのはよくないと思う。実際、SNSの流動性が高過ぎた結果、フェイクニュースが拡散したり、クソリプが蔓延しやすい環境ができたわけだから。

市川:
僕としては「流動性」には二種類あると思っていて、一つは隣の村への平行移動、もう一つは「どこでもドア」みたいなワープがある。今のくらは君が指摘したような流動性は後者だよね。

くらは:
そうだね。火種を見つけたらそこにワープして、さらに燃料を投下して炎上させているようなイメージ。

市川:
で、山下君が言っているのは前者の平行移動の方。こちらは流動性はそれなりにあるけれど、何らかの制限があるために近場にしか行けない。もちろん、近場から別の近場、さらに別の近場へ……という風にコストを払い続ければどこにでも行けるかもしれないけど、どうしてもコストがかかる。

山下:
その場合、村の中でヤバいことになったら、隣へ逃げる平行移動ができるというのは大事なことだね。まぁ、「ダメなら逃げよう」と言っても、どこに行ってもダメな人はどうするのかという問題はあるけれど……。

さいむ:
SNSの場合、炎上については流動性の高さゆえにダメになった印象があります。

くらは:
SNSに関して言えば、結局のところ、ネット上での議論は思想や主張によるクラスタリング、言い換えれば「囲い」が存在しないからダメだったんじゃないかな。少し前からオンラインサロンが次々と出てきているけれど、これは「囲い」がなかったためにそれなりに囲われた場所が求められた結果として作られていった。市川さんが言ったように流動性を限定するのが最近の流れだし、これ自体は無益な争いを生み出さないという点で正しいと思う。

山下:
個人的には、流動性の高いSNSが将来的にヤバい人たちのセーフティネットになる未来も考えられるかな。リアルなコミュニケーションだと失敗したらハブられるし、囲われたネットでも移動にコストがかかる。だけど、TwitterのようなSNSなら、アカウントを作り直すだけでいいから簡単だし。

くらは:
極端な方向に進めばそうなる可能性もあるけれど、やっぱりSNSに関しては「気軽に共有できる」というのが最終的に残るんじゃないかな。「Tik Tok」のような小さなSNSの情報や、ネットがきっかけでできたゲームでの繋がりをひとめとめに管理するものとして、これからもTwitterのような大きなSNSは存在し続けると思う。

♦マッチングはAIに任せたい

さいむ:
つまり、今後のWebには上手く人と繋がるための方法が必要ということでしょうか?

くらは:
そうだね。でも、少なくともWeb上のマッチングについては、今後AIに任せたいかな。

市川:
同感。

さいむ:
えっ、人間関係ってそんな簡単にマッチングできちゃうんですか?

市川:
うん。AIって何でもかんでも計算しきってしまうイメージを持たれがちだけど、実際のところは結構曖昧に見えるような分配もするからね。

くらは:
もう少し詳しく言えば、確かに多少雑ではあるんだけど、膨大なデータを扱うから正しい方向に進みやすくなる。正直、現時点でのAIを使って僕が雑誌を作るメンバーを集めようとしたら、最終的に今いるメンバーがピックアップされると思うよ。少なくとも、僕はそれくらいAIを信用している。AIは皆が思ってるほど怖いものではないから、変に身構えずに議論していけばいいと思う。AIだけじゃなく、ロボットやIoTといった新技術全般に言えることだけれど。

市川:
そうそう。で、僕みたいな理系はしっかりと人文学のことを学べばいいんですよ。

山下:
少し話は逸れるけれど、「文系/理系の区分はくだらない」という話はウチのサークル内でもよく出ているけど、テクノロジーの進歩によってこの区分が「くだらない」どころか「マズい」ものになってきている印象があるなぁ。

くらは:
だからこそ、僕たちが作っているジャンル不定カルチャー誌『アレ』では創刊以来一貫して文系と理系を「テクノロジー」という線で繋げて、その壁をなくそうと試みている。創刊から2年が経過したけど、読者の皆さんにそれが伝わっているといいな。

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♦AIと仕事:IoTを普及させるのは?

さいむ:
AIについては人が職を奪われるかもしれないという話も出ていますが、今後AIはどういう風に社会に浸透していくんでしょうか?

くらは:
それについては既に『アレ』Vol.2の三宅陽一郎さんのインタビュー記事や、『アレ』Vol.4の金岡博士のインタビュー記事などでしっかりと言及されているから、既刊を読み返して。サークルメンバーなんだから、ちゃんと既刊の内容は覚えておけよ(笑)

山下:
一応補足しておくと、例えば茂木健一郎さんはAIが人間には想像できないような能力を持つことはないし、それゆえにシンギュラリティも起きないって言っている。でも、だからこそ職を奪われるんじゃないかという声もある。

市川:
営業や接待、それから風俗はこれからも残るだろうけど、弁護士や検察官みたいな職種はなくなりそうな気がするかな。人間が苦労してスキルを身に付けるような分野ほど、AIに取って代わられると思う。

くらは:
でも一方で、AIやロボットの導入で、例えば医療の現場なんかは今後物凄く進歩していくと思うよ。

市川:
ロボティクスも進んだしね。そういやロボットといえば、今年はボストン・ダイナミクス社のロボットがパルクールをやって話題になったね。あれは凄いと思うよ。あと、自動車関係だと現在日本で自動運転の試験が盛んに行われているけど、技術的に見れば完全自動運転車が公道を走るようになる日も近いと思うし、そうなれば物流が変わるだろうね。近代国家も鉄道によって発展したけど、モビリティが変わって物流もまた変われば、経済もまた変わる可能性がある。

くらは:
逆に、AIやロボットで消えない職業は、職業の性質上、人間が行うことが求められる職業だろうね。

山下:
そういう意味ではニュースキャスターは残る職業だと思う。まぁ、人間を見たくない人はVtuberとかで見るとは思うし、中国では今年AIニュースキャスターがデビューしたけれど、それでもキャスターという仕事自体は残るんじゃないかな。

参考:中国でAIニュースキャスター2人がデビュー。リアルな外観とそれほどでもない喋りに視聴者ザワつく(engadget)

くらは:
医師はAIによっていらなくなるという話もあるね。実際のところはまだ分からないけれど、でも、医師はともかく介護士や看護師はこれからも残るんじゃないかな。誤解を恐れずにさらに言えば、かつては「女性の仕事」とされていた職業。つまりは受付嬢や保育士、それから風俗業に従事する人たちは残り続ける。こうした職業は、昔から人間が心地よいコミュニケーションを求めて作られた職業だからね。

市川:
ともあれ、皆が思っているほどAIは怖いものではないし、使って負担が減ったり楽になったりするなら、どんどん使っていいと思う。でも、AIやIoTが普及していけば、経済格差以前に技術へのアクセス格差が広がるだろうね。魔法をかける側とかけられる側に分かれるという風に。

くらは:
個人的には、それが顕著になるのはスマートスピーカーが普及した時だと思ってる。でも、最低でも後4~5年はかかるかな。今はまだエコシステムが不完全なせいで、他のものとの連携がイマイチだから。スマートスピーカーが生活の中にAIやIoTを溶け込ませていって、その表現技法としてARも発展していくというのが、現時点での僕の未来予測。

市川:
あと、農業のIT化みたいなことも、今からしっかりと考えておいた方がいいだろうね。第一次産業は大規模化と機械化をしないと、今後さらに苦しくなっていくだろうから。

◆インターバル

さいむ:
少し「Tik Tok」から話が広がり過ぎましたね。

山下:
まぁ、一年の振り返りだから話題は色々あるでしょ。

市川:
せやな。さて、眠いので僕はそろそろ寝るよ。

一同:
おやすみなさい。

山下:
そういや、流行語大賞ってあるけど、今年は「#MeToo」「eスポーツ」が選ばれてたね。特に「eスポーツ」でメシを食っているくらは、何かある?

くらは:
雑な聞き方だな(笑)eスポーツについては話すと長くなるから、来年からこのサイト(「コレ!」)や「note」で書いていくつもり。eスポーツはお金がきちんと回るようになれば日本でも長期的に定着していくと思うから、上手くやっていきたいね。

さいむ:
人文学や評論系同人誌については何かありますか?

くらは:
それは永井さんが帰ってきてからかな。事務局長だし、話したいこともあるでしょ。

30分後……

永井:
ただいま。

くらは:
来ましたね、待っていました。

永井:
……あぁ、「アレ★トーク」収録しているのね、察したわ。それで、何について話せばいいんですか?

◆今年の評論・批評シーンと評論系同人誌のこれから

さいむ:
ここからは永井さん&くらはさんがメインになると思うので、色々とぶっちゃけ話を期待します。それで、単刀直入に言いますと、今年の評論・批評シーンや評論系同人誌について振り返ってもらえますか?

くらは:
僕と永井さんは、編集長と事務局長という立場上、色々なことを話してきたから若干今更なところもあるだろうけど……まずは永井さん、話したいでしょ?(笑)

永井:
ハードル上げるねぇ……(笑)まぁ、まず評論・批評シーンについては、つい先日『ゲンロン』さんの会社規模縮小や廃刊騒動が起こったけれど、良くも悪くもあれが全てを持っていった感はあるかなぁ。で、この件についてTwitterや5chで色んな人が喧々諤々しているけれど、今後『ゲンロン』さんがどうなるかに関わらず、『ゲンロン』が何だったのか、『ゲンロン』は何ができて何ができなかったのかについては、評論や批評に関わる人たちは考えた方がいいんじゃないかな。

さいむ:
永井さんは『ゲンロン』をどういう媒体だと考えていますか?

永井:
「媒体」という点で言えば、『批評空間』終刊後の批評界隈をまとめ上げた立役者だし、ある意味で批評界隈のリードオフマンだと思っているよ。もちろん、『ゲンロン』以外にも評論誌や批評誌はあるけれど、少なくとも書店の人文系雑誌の棚に行って真っ先に目につくのは『ゲンロン』さんと『PLANETS』さんだし。ちなみに『批評空間』は1991年に創刊されたので、時期的にはニューアカ・ブームの後になる。

山下:
そういえば、ニューアカ・ブームの頃は評論誌や批評誌が色々と創刊されたんでしたっけ?

永井:
うん、そうだね。それについては東さんが監修している『現代日本の批評 1975-2001』(2017,講談社)にも書かれているけれど、簡単に言えばニューアカ・ブームの頃には色々と新しい雑誌やムック本が次々と出てきた。でも、ブームが過ぎた結果、評論誌や批評誌は次第に『ユリイカ』や『批評空間』に収斂していく。でも、『批評空間』も終わってしまって、その後に改めて批評クラスタをまとめたのが『ゲンロン』ということになるかな。もっとも、これはあくまでもざっくりとまとめた話だし、『ゲンロン』や『PLANETS』に関わっていない批評クラスタもいると思うので、そこは一応断っておきます。

さいむ:
最近は文学フリマでもクオリティの高い評論系同人誌がかなり増えていますけれど、評論・批評系同人界隈については何かありますか?

永井:
去年からの流れからになるけど、『エクリヲ』さんが第7号から商業化したのは明るいニュースですね。全国流通は大変だろうけど、頑張ってほしいなと思っています。あと、これも『エクリヲ』さんだけど、今年11月に出た新刊から批評誌レビューを始めたり、さらには『夜航』さんや『G-W-G』さんと一緒に神戸大学でシンポジウムに出たりと、これまで何となくあった他サークルの活動に言及したり関わったりしない空気が、徐々に軟化しているような気はするね。実際、今年に入ってから文学フリマでも他サークルさんから「〈アレ★Club〉さんと一緒に何かやりたいですね」というお声がけを結構いただくようになっていますし、来年は一緒に何かやれたら面白いですね。

山下:
一緒にイベントをやっていくことで、評論・批評系同人界隈が盛り上がればいいですよね。

永井:
そうだね。実際、僕やくらはさんは常日頃から「ウチだけが売れてもしょうがない、シーンが盛り上がらないといけない」と言っているけれど、今のところそれが他サークルさんと共有できているかは分からない。でも、一定の枠組みの中でしかシーンを作れていない状態だと衰退する一方だから、目先の勝ち負けよりも全体の盛り上がりを考えて今後も活動していきたいね。

山下:
この記事を読んでいる方向けに言っておくと、〈アレ★Club〉のイベントはカレー会はもちろん、毎月やっている〈みずうみ〉さんでの「ものを書くための、読書会」、さらには来年1月にやるアサダワタルさんがゲストのイベントも、他サークルさんのご参加大歓迎です!

くらは:
代表、宣伝ありがとう(笑)

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♦サロン化の中で、風通しを良くする

くらは:
でも、永井さんが話したような変化がある一方で、人文知についてはどんどんサロン化、つまりは内にこもりがちになってきている。これは間違いないだろうし、今後もその方向に進んでいくことは容易に予測可能だよね。だから、僕としては「風通しを良くする」ということが、今後の人文系コミュニティにとって必要になってくると考えている。もちろん、経済的な面を考えればサロン化した方が効率的だし、オープンにするとどうしても色々なコストがかかって、結果として質を落とさざるを得なくなる部分が沢山出てくる。なので、個人的にはサロン化に関しては悪いとは思っていないという前提があるんだけれど。実際、〈アレ★Club〉も含めた評論系同人誌も、評論や批評、哲学や思想などの興味関心によって固定された、ある種のクラスタだし。だけど、あまりに風通しが悪いと腐敗が起こる。なので、〈アレ★Club〉としてはイベントに出たり、こうやってWebで発信したりして、色々と試行錯誤を繰り返しながら、少しでも風通しを良くしていきたいと思ってる。

永井:
文学フリマの評論ジャンルはここ1~2年盛り上がっているし、評論・批評サークルの数も増えてきているから、ウチとしては今後も地道に活動していって、風通しを良くしていきたいね。

くらは:
注意点として、他サークルさんとの交流に関しては、プロレスをしないこと、それから不毛な争いに関わらないようにすることがとても大事。もちろん、ライバル視することでお互いが切磋琢磨してクオリティが上がったり、あるいは相互参照が増えたりすることはシーンの活性化にも繋がるからいいと思うけれど、一方で批評家プロレスのようなドンパチを見たがる人、ドンパチそのものが好きな人も内外に一定数存在しているのも事実。そういう人たちが「シーンを盛り上げよう」という意識を持っているかは分からないけれど、皆で協力して市場を大きくしていく方が健全だし、ただでさえ少ないパイを奪い合うのは不毛でしかない。

永井:
パイの奪い合いといえば、『ゲンロン』さんの件の影響は、少なからず評論・批評系同人界隈にも波及するんじゃないかと思っているよ。で、それが「俺たちが次世代の『ゲンロン』を作るんだ!」みたいなモチベーションに繋がるような影響ならまだいいんだけど、『ゲンロン』を通してしか評論や批評に触れていない人たちがそれらから離れるきっかけとなってしまったら、やっぱりマズいよなぁ……。

さいむ:
単刀直入に聞きますが、くらはさんと永井さんは今回の『ゲンロン』の件をどう思っていますか?

くらは:
「残念だ」としか言いようがないよ。でも、僕は東さんのことを尊敬しているし、これからも応援していきたい。

永井:
さっき「次世代の『ゲンロン』」って言ったけれど、例えば批評再生塾から生まれた『クライテリア』さんや『ロカスト』さんが今回の件、さらには評論・批評系同人シーンや自分たちの媒体の今後をどう考えているのかについては、機会があれば聞いてみたいかな。もちろん、これらはしっかりと作られている媒体だけど、『ゲンロン』や批評再生塾が関係しているから購入している層も少なからずいると思う。なので、今後これらの媒体が『ゲンロン』読者や批評クラスタの次の受け皿として機能するのか、商業化の可能性も含めて気になるところではある。

さいむ:
『アレ』は一般書店でも委託販売をしていますが、同人誌の委託販売については何かありますか?

永井:
『アレ』の場合、創刊以来一般書店さんで委託販売をしていて、読者の方や他サークルさんからも「一般書店にも置いてるなんて凄いですね」というご意見をいただくけれど、二次創作はともかく、一次創作ならジャンルを問わずに一般書店さんで委託販売をするチャンスは大いにあると思ってる。あと、これは決して『エクリヲ』さんの批判ではないと断った上で、書店さんへの流通に関して取次さんを使うのがウチも含めた評論系同人誌にとって最適解なのか、言い換えれば日本全国に置けることが最終的なゴールなのかについては、色々と検討していきたいね。

くらは:
〈アレ★Club〉としては今後同人誌作りや書店委託に関するノウハウとかも可能な範囲で広く共有できるような仕組み作りを考えているけど、やっぱり「同人活動はもっと簡単にできる」ということを発信していきたい。

永井:
〈アレ★Club〉の書店委託担当としては、専門店じゃない一般書店さんでも評論系同人誌は努力次第で置けるし、直取引に対する書店さんの負担が減れば、店舗ごとに特色ある棚作りができるようになるので、それが可能になる仕組み作りについてはしっかり考えていきたいね。

くらは:
あと、本は書店さんに限らず、寄稿者さんやインタビュイーさんを含めた「作り手」はもちろん、印刷所さんや取次さん、デザイナーさんやレイアウターさんといった大勢の方が関わって「読み手」に届けられている。だからこそ「作り手」と「読み手」の間にある沢山の担い手の方々についても、しっかりと意識してやっていきたいとは思っているよ。

永井:
あと、これはハッキリと言っておきたいんだけど、この前ウチもお世話になっている寸心堂書店さんが出ていた古書即売会で『エクリヲ4』を見つけたんですよ。この本、今はもう電子書籍版しか売っていないし、紙媒体で読みたいから買ったんですが、その時に以前Twitterで誰かが「自分の作った本が古本屋に並べられていると萎える」みたいなことをツイートしていたのを思い出したんだよね。こういう考え方については、その本を買い取って売り出している古書店さんに本当に失礼なので、マジでやめた方がいいと思います。古書即売会は決して掃き溜めなんかじゃないし、新しい客層、未知の読者に繋がるチャンス、正しい意味で「誤配」が生じる場だと思います。なので、今後もウチでは寸心堂書店さんを中心に、古書即売会での同人誌販売については取り組んでいきたいですね。

くらは:
口調が完全に外に向けられている(笑)

さいむ:
っと……そろそろ終わらないと、皆さん明日に差し支えますね。というわけで代表と編集長、最後の〆をお願いします。

山下・くらは:
皆様、今年一年大変お世話になりました。お陰様で当会こと〈アレ★Club〉は、今月『アレ』Vol.1~Vol.4までの既刊の電子書籍化が完了し、AmazonのKindleストアでも多くの方にお読みいただいております。また、今年はイベントも数多く開催することができ、読者コミュニティの拡大を図ることができたという意味でも、当会にとって大躍進の年でした。しかし、当会はまだまだ駆け出しの若輩者です。来年は皆様に日常の中に潜む「アレ」についてより精力的に取り組んでいく所存ですので、今後も〈アレ★Club〉を、何卒よろしくお願い申し上げます。

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[記事作成者:さいむ]