見出し画像

世界一長いタイトルの本を和訳したらとんでもない目に遭った

先日ふと「世界で最も長いタイトルの本は何だろうか」と思い至り、検索したところ、予想外にも2019年にギネス認定を受けた本があった。総文字数は2万6,021文字、単語数は3,777と、破格の長さである。日本語の本でも長いタイトルの本は最近多く見かけるが、これの比ではない。

さて、本題である世界で一番長いタイトルの本について紹介すると、それは2019年3月20日にキルギスで発売された、ビツアラ・イェティンドラ博士による『心臓、すなわち環形動物門……、節足動物門……、軟体動物……、魚類すなわち硬骨魚類……、両生類……、爬虫類、……鳥類……、そして哺乳類……のその構造からの歴史的発展。心臓の起源とは何だろうか。……(抄訳)』というもの。タイトルすらも抄訳しなければ一体何が書かれているかも分からなくなると考えたため、一先ずこちらを訳した。そしてその内容については、心臓に関する科学的研究の歴史や無脊椎動物から脊椎動物に至る心臓の発展、また心臓と循環系の説明についての記述、ならびに心臓についての解剖学・生理学的事実についてや、心筋梗塞などの心臓にまつわる病気のリスクや予防策についての説明が質疑応答の形で書かれている本である。

画像1

(表紙。書かれている文字全てがタイトルである。)

そして、「歴史的発展」までにカットした部分は全て生物の名前である。つまり、①環形動物門②節足動物門③軟体動物④魚類⑤両生類⑥爬虫類⑦鳥類⑧哺乳類の生き物の名前の羅列が延々と続くのである。ひとまず④のB列までと、⑤~⑧の冒頭、そして⑧の後に続く心臓についての解剖学的・生理学的事実についての記述(これがまた長いのだが)を以下に訳してみた。

『心臓、すなわち以下の生物の構造からの歴史的発展。環形動物門:ゴカイ、ウミネズミ、タマシキゴカイ、巨大頭節(メガスコレックス)、イトミミズ、フトミミズ、淡水棲ヒル、海ヒル、陸棲ヒル。節足動物門:テントウムシ、オキアミ、フジツボ、フクロムシ、カイアシ、セイヨウシミ、ケアンズ・バードウィング、ホソバセセリ、スクティゲラ、イセエビ、オオモンシロチョウ、アドニスヒメシジミ、キベリタテハ、トラフアゲハ、ラッフルズセセリ、エゾシロチョウ、シジミチョウ、メネラウスモルフォ、アポロチョウ、グアバセセリ、クレオパトラ蝶、オオベニシジミ、ヤスデ、コガネグモ、ゴケグモ、アシダカグモ、コモリグモ、ルブロンオオツチグモ、ゴミムシダマシ、ミドリニワハンミョウ、ゴライアスオオツノハナムグリ、オオムカデ、エゾゲンゴロウモドキ、オサムシ、パプアニューギニアゾウムシ、エボシガイ、ロブスター、エビ、ワラジムシ、ダニ、クルマエビ、イエバエ、蝶、オオカバマダラ、クジャクチョウ、ミツバチ、ホウネンエビ、カブトガニ、マダニ、ホホアカクロバエ、アワフキムシ、アシナガキアリ、ミジンコ、ウミグモ、シオマネキ、タカアシガニ、ヤドカリ、ヨーロッパタイマイ、ヨーロッパアカタテハ、モルフォチョウ、サバクトビバッタ、スティーブンズ島カマドウマ、マダラカマドウマ、オケラ、スカラベ、ユニパルドゥス・イナズマチョウ、ミニムスコマシジミ、シロアリ、スズメバチ、蚊、キマダラコガネグモ、タランチュラ、デザートヘアリースコーピオン、コウテイギンヤンマ、蛾、ムカデ、赤蟻、クワガタムシ、アカタテハ、ルリタテハ、ザトウムシ、ハナアブ、カメムシ、サシガメ、セミ、ヘリカメムシ、バラアブラムシ、ミズムシ、カリバチ、コガネムシ、ヒオドシチョウ、モモブトオオルリハムシ、メキシカンレッドレッグ、ヒメアカタテハ、シドニージョウゴグモ、コヒオドシ、ビルベリーマルハナバチ、トタテグモ、ハエトリグモ、ユウレイグモ、シタバチ、アジアクマバチ、寄生バチ、イエタナグモ、カミキリムシ、ノミ、トコジラミ、ゴキブリ、サソリ、クモ、アリ、ハエ、イナゴ、セイヨウシミ、カニ、ヤブキリ、ベニスズメ。軟体動物:フトヒモ、ウミヒモ、ヒザラガイ、サメハダヒザラガイ、リンゴガイ、タツナミガイ、ドーリス、ツノガイ、カラスガイ、イガイ、真珠貝、コウイカ、ダイオウイカ、オウムガイ、タコ。魚類すなわち硬骨魚類:アフリカ・ガラスナマズ、アフリカ・ハイギョ、ユゴイ、ヒレナマズ、アラスカ・ブラックフィッシュ、ビンナガ、エールワイフ、キンメダイ、アルジーイーター、アリゲーターフィッシュ、アリゲーターガー、ブリ、シタビラメ、アムールパイク、カタクチイワシ、クマノミ、エンゼルフィッシュ、アンコウ、アンコウナマズ、チョウチンアンコウ、ライギョダマシ、コオリウオ、アンテナサイウオ、ピラルクー、テッポウウオ、ホッキョクイワナ、ヒゲキホウボウ、キホウボウ、カワビシャ、クラノグラニス、ロリカリア、アロワナ、ホラアナゴ、鯉、アジアティック・グラスフィッシュ、キタノホッケ、タイセイヨウハガツオ(Sadra sarda)、タイセイヨウダラ、タイセイヨウニシ、タイセイヨウサケ、タイセイヨウヒラガシラ―Rhizoprioltodon terraenovae、タイセイヨウサンマ、タイセイヨウトウゴロウイワシ、アリピス、オーストラリア・カワヒメマス、オーストラリア・ニシン、オーストラリアハイギョ、オーストラリア・カサゴ、鮎、バイカルバラムツ、シルバーシャーク、バランベラ、テンジクザメ、バンディッド・キリフィッシュ、イッテンアカタチ、バンジョー、バンガス、バンジョーナマズ、ブラックシーバス、バーブ、バーベル、バーベル・ドラゴンフィッシュ、アフリカドチザメ、バーベルレスナマズ、イエローバス、オニカマス、ハダカエソ、バラマンディ、バードゥ・ダニオ、デメニギス、ウバザメ、バス、グランマ、ツバメウオ、カリフォルニアバットレイ、ビーチサーモン、ビークトサーモン、ネズミギス、サンドフィッシュ、ギンメダイ、オオチョウザメ、ベンガルダニオ、ポリプテルス、インドヒメジ、メバチ、コクレン、ビッグマウスバッファロー、アカマツカサ、カジキ、ヨーロッパタナゴ、ブラック・エンゼル、ブラックバス、ナンヨウミツマタヤリウオ、ブラックチン、タイセイヨウマグロ―Thunnus atlanticus、ブラックフィッシュ、ブラックネオンテトラ、ツマグロ、クロサバ、ブラックシーバス、クロタチモドキ、オニボウズギス、ブラックテトラ、ソロイモンガラ、バンクシーバス aka イエローシーバス―Centropristis ocyurus、ブリーク、ブレニィ、ブラインド・ゴビー、シロボシホソメテンジクザメ、ニュウドウカジカ、ブルーライン・タイルフィッシュ、フグ、アオナマズ、ブルーダニオ、ブルー・レッドストライプダニオ、ブルーライン・タイルフィッシュ、ブルー・アイ、タイセイヨウクロマグロ、オキスズキ、ブルーギル、スリースポットグラミー、ヨシキリザメ、イソモンガラ、プタスダラ、ダルノーズ・ナイフフィッシュ、ダルノーズ・ミノウ、ワニトカゲギス、ツボダイ、ボブテールスナイプウナギ、フサカサゴ、ボガ、テナガミズテング、ボーンフィッシュ、ハガツオ、ハチビキ、ヒーラマス、ブロンズコリドラ、オステオグロサム、アミア・カルヴァ、ハコフグ、キクザメ、ブリーム、ブリル、ヨコエソ、ヒポストムス・プレコストムス、ブロードバンド・ツノザメ、スナヤツメ、カワマス、イタチウオ、ブラウントラウト、バッファローフィッシュ、ブルヘッド、ネコザメ、オオメジロザメ、ブルトラウト、カワメンタイ、バンブルビーゴビー、鰤、ブルマダリオ、ボロウィング・ゴビー、マナガツオ、ツバクロエイ、チョウチョウウオ、……ダイバー:ニュージーランド・サンドダイバーすなわちロングフィンサンドダイバー……。両生類:カエルおよびヒキガエル、イロワケガエル、……。爬虫類:カメ、カミツキガメおよびワニガメ……鳥類:ダチョウ、レア、ヒクイドリおよびエミュー、キーウィ、エピオルニス……そして哺乳類:ネズミ、コウモリ、馬、繋駕、サラブレッド、アメリカン・サドルブレッド、アラビア馬……、ホモ・サピエンス(ネアンデルタール人、クロマニョン人)から現代人まで、その発展と心臓の構造、現代人の形成に対する貢献。心臓の起源とは何か。心臓はどんな場所に位置しているか。私たち(現代人)の心臓の重さはどのくらいか。心臓がなくても人は生きていけるのか。心臓の機能とは何か。心臓はどのようにして血液を体に送り出すか。人間の心臓ではどのような循環が行われているか。人間の心臓の大きさはどれくらいか。なぜ私たち(現代人)の心臓は、世界で最も発達していると考えられているのか。なぜ心臓は止まるのか。心音とは何か。心音にはどのような種類があるか。聴診器で聞こえる心音の原因とは何か。心臓の解剖学上の特徴とは何か。なぜ心臓は体の中で重要な器官と考えられているか。なぜ心拍が止まると人は生きられないのか。心臓はどこにあるのか。心臓にはいくつ心室があるか。1分間の心拍数はどのくらいか。心臓が送り出す血液の量はどのくらいか。人間の心臓は一生の間にどのくらいの量の血液を送り出すか。心臓発作に関する短報すなわち心臓発作の定義とは何か。なぜ心臓発作は起こるのか。心臓発作にはどのような種類があるか。人が心臓発作を起こすとどうなるのか。心臓発作の症状とは何か。心臓発作の原因とは何か。心臓発作に関連する危険因子は何か。心臓発作の危険因子にはどのようなものがあるか。心臓発作の合併症にはどのようなものがあるか。心臓発作の発見や治療に役立つ診断方法とは何か。心臓発作の治療にはどのような治療が必要か。心臓発作の後に維持すべき5つの戦略とは何か。心臓発作から回復した後にすべきこととは何か。心臓リハビリテーションとは何か。なぜ心臓発作の患者には心臓リハビリテーションが必要なのか。心臓リハビリテーションは良い効果を生むか。生活習慣と自宅療法では何を維持する必要があるか。心臓発作の患者にはどのような対処法やサポートが必要か。心臓発作患者の緊急事態に遭遇した場合、直ちに取るべき対策とは何か。医師に相談すべき兆候と症状のリストとは何か。ウィドウ・メーカー心臓発作とは何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の定義とは何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の症状とは何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の原因は何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の危険因子は何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の合併症とは何か。ウィドウ・メーカー心臓発作の発見と治療に役立つ診断方法は何か。心臓発作患者の治療にはどのような治療が必要か。生活習慣を見直すにはどうすればいいか。心筋梗塞にならないためにはどのような対策が必要か。心臓の健康を保つために摂取すべき20種類の食品とは。上記の質問、データ、トピックの解決策や回答は、この本に含まれており、明らかにされています。』

 原文についてはコチラを参照して欲しいが、ここまでで1,134単語(7,775文字)を訳したことになる(と言っても殆どが検索して和名を探したり学名を無理やりカタカナに落とし込んだだけなのだが)。つまり、これで全体の3分の1以下である。正直これを全て訳すということは不可能ではないだろうが、限りなくただの苦行にしかならないだろう(少なくとも私はもうやりたくない)。和名が存在する生き物ならまだ楽だが、アメリカのごく一部や、北ヨーロッパの一部、南アジアの一部などの局所でしか見つからない生き物には和名が存在しないケースもかなり多い。そのため、その生き物の通称や学名などを無理やり日本語(カタカナ)に落とし込むだけの作業になるのである。

 あと、ちなみにこの本はAmazon.in(インド)で購入でき、価格はペーパーブック版で約533円(2021年4月現在)、Kindle で74円である。そして総ページ数はなんと………


たったの80ページである。短い。

もし興味を持った方がいれば読んでみてもいいかもしれない……。


……ちなみに、「世界一長いタイトルの本」は日本語と英語とドイツ語で検索をかけたが、それぞれ全く違った話が出てきたのでオマケ程度に書き記しておこう。まず日本語では『ロビンソンクルーソー』の原題がやたら長いという話と、次にドイツ語では「世界一長く借りられた本」がそれぞれ出てきた。前者はWikiによれば「自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述」(The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner: Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un‐inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque; Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver'd by Pyrates)とのこと。とはいえやはり、結局のところまだ出版していないときの仮案なので、それが世界一長いタイトルの本かと言われると難しいだろう。そして後者は、カナダのヴィクトリアに住むイヴ・レティスという女性が、1998年にたまたま屋根裏掃除をしていたところ、1916年に借りた、ステファン・リーコックというカナダの教師・政治学者が書いた『Sunshine Sketches of a Little Town』が発見されたとのこと。借りてから82年後になってようやく地元の図書館に返却したところ、超過金の7,200カナダドル(=約63万円)は払わずに済んだらしい。検索ワードは複数個用意してみると、全然違った結果になるため面白い。

ご支援頂けましたら、記事執筆や編集の糧にしたいと思います。蔵書を増やすと、編集できる幅が広がります。