「秘密基地人機一体」竣工式レポート


◆「人機一体」、新たなる「発進」

7月24日、『アレ』Vol.4で取材させていただいた<(株)人機一体(以下、人機一体)>が、これまで所属していた立命館大学から「卒業」して「秘密基地人機一体」として独立し、完成した新社屋の竣工式が執り行われた。同社は、遠隔地でも独立して人が操作することができる巨大ロボットを開発しており、被災地などの危険な現場における力仕事を軽減させることを目的としている。

<人機一体>の代表取締役社長である金岡博士は、2020年を目途に、高さ4メートル、独立二足歩行型の巨大ロボット(人型重機)の完成を目指している。既に上半身の動作がほぼ完成しているため、現在は下半身の製作にあたっているそうだ。

竣工式では、上半身の試作機である“MMSEBattroid ver.1.1”が、テープカットに模した丸太をチェーンソーで一刀両断するというパフォーマンスが行われ、関係者一同を驚愕の渦に巻き込んだ(写真)。巨大ロボットの持つ魅力を存分に味わってほしいと考える金岡博士は、今後は「秘密基地人機一体」をよりオープンな場にすることで、訪れた人が実際にロボットの操縦体験ができるようにしていきたいと語っていた。

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丸太を見事カットした“MMSEBattroid ver.1.1”

新社屋である「秘密基地人機一体」は、全体としての広さが300平方メートル、高さ9メートルで、ちょうど巨大ロボットが横になっているようなデザインの施設だ。頭~胴体にあたる部分が開発室(工場)、足の部分が研究室となっている。工場には巨大ロボットの開発にも耐えられるよう、2.8トンのクレーンが2基取り付けられており、クレーン整備などのためにキャットウォークも用意されている。一方、研究室内部には植物工場が備え付けられ、約1日半間隔でレタスが収穫できるようになっており、先端テクノロジーと自然の融合が目指されている。

金岡博士は、「秘密基地人機一体」を「船」と見立てている。そのため、こうした実用的な設備の他にも、いたるところに「発進」するためのディティールが施されている。例えば、駐車スペースが空母の甲板のようなデザインになっていたり、工場に繋がる大型シャッターには『宇宙戦艦ヤマト』に登場するアンドロメダの波動砲口を意識したオレンジ色の六角形があしらわれていたりする。このような細やかな気配りを通して、金岡博士はロボットとエンターテインメントを結び付けたいと考えているそうだ。

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六角形の入口はアンドロメダ(宇宙戦艦ヤマト)の波動砲口を意識している。

◆「子供の長靴」から「巨大ロボット」へ

その後、別会場で行われた講演会で、金岡博士は「秘密基地人機一体、起動!」と題した講演を行い、「人型重機は子供に長靴を履かせることと同じ」だと語った。つまり、長靴とは本来、水を弾き、足を水から守るものであり、それを履いた人は長靴の特徴を重々承知しながらも、なるだけ水に濡れないよう歩くはずなのに、長靴を履いた子供は、楽しそうに自ら水たまりへと足を突っ込みにいく。長靴という新たなパーツを手に入れたことで、新たなことにチャレンジするそうした子供の姿勢は、本来、人間能力の拡張による作業の効率化という、どこまでも実利のために開発される人型重機を「自分の身体と同じように、あるいはそれ以上に」直感的に操ることが、人の根源的な喜びに繋がると考える金岡博士自身の思想と通じるものがあるのだという。

もちろん、被災地での救護活動といったような、真面目に作業に取り組まなければならない場面では、そうした楽しみを第一に考えている場合ではないかもしれない。しかし、金岡博士が考える「ロボットによる、人間の身体の拡張」という思想には、<人機一体>が掲げる「あまねく世界からフィジカルな苦役を無用とする」という社風の他にも、人間の身体を動かすだけでは見えなかった楽しさが、巨大ロボットという拡張された身体を動かす経験を通じて得られるようになればいいという願いが込められているように、筆者には映った。

今後も「コレ!」では、不定期ではあるが「秘密基地人機一体」の活動を紹介していきたい。

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新社屋の解説を行う金岡博士

※また、今回<(株)人機一体>のご厚意により、竣工式第三部の祝賀会にて、金岡博士のインタビュー記事を収録した『アレ』Vol.4を頒布する機会を設けていただいた。この場を借りてではあるが、改めて感謝の意を表したい。

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祝賀会の『アレ』Vol.4頒布ブース

株式会社人機一体ホームページ

[記事作成者:山下泰春]