第六回文学フリマ大阪参加レポート


◆災害の傷跡癒えぬままに

昨日9月9日(、大阪・天満橋にあるOMMビルにて「第六回文学フリマ大阪」が開催されました。開会挨拶で大阪事務局代表の高田好古氏も仰られていたように、今年の「文フリ大阪」は今年6月に起きた大阪北部地震や連日の豪雨、そして台風21号の被害を被った末の開催でした。実際、午前10時を回ってサークル入場をした後も、当会に限らず多くのサークル参加者の方々が事務局の方や他のサークル参加者さんたちとお互いに無事を確認し合って、台風の被害やその対応について話し合ったり愚痴をこぼし合ったりしていました。また、当日はまたしても朝から豪雨に見舞われ、参加者の足が渋るのではないかと危ぶまれましたが、私個人の印象としては決してそのようなことはなく、多くの参加者が来てくださったように思えました。

と、今回の「文フリ大阪」はこれまでの開催の中でもとりわけ厳しい環境下での開催となったのですが、実は会場がこれまで利用していた「堺市産業振興センター(以下、振興センター)」から「OMMビル(以下、OMM)」に移ったことによって、いくつかの変化が生じたように感じました。このレポートではその内容と、実際に私が会場で見聞きしたことを交えながら、今回の「文学フリマ大阪」について簡単にですがまとめたいと思います。

◆会場の変更について

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第六回文学フリマ大阪のチラシ。描かれている人物は大阪の経済基盤を作ったことで有名な五代友厚(1836~1885)

まず、今回の「文フリ大阪」で特筆すべきは、やはりこれまでの堺市開催から天満橋に会場が変更されたことで、参加者にとってのアクセスが飛躍的に良くなったことが挙げられます。確かに「振興センター」は、大阪メトロ・御堂筋線のターミナル駅であるなかもず駅や南海電鉄・高野線の中百舌鳥駅が最寄駅であり、それぞれの駅から徒歩5分くらいの場所に位置しています。しかし、一方の「OMM」は大阪メトロ・谷町線の天満橋駅および京阪電鉄・京阪線の天満橋駅が最寄駅であるだけでなく、「振興センター」と比べて大阪の都市部により近いため、神戸や京都方面からのアクセスが良いことに加えて、何より会場が駅から直結しているため、雨に濡れずに行くことができました。

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「第六回文学フリマ大阪」における当会こと〈アレ★Club〉のブース(I-28)の様子

実際、今回ブースに来てくださった一般参加者の方の中には、東京などの遠方から来られていた方が比較的多かったです。もちろん、近畿圏の参加者が圧倒的多数だとは思いますが、そうした遠方からの参加者という存在が、2013年の「第十六回文学フリマ」が急遽大阪開催になって以後脈々と続いてきた、「大阪」という一地方で「文学フリマ」を開催することの意義をより確かなものにしたのではないかという風に感じられました。また、文学フリマ事務局は2014年12月に「文学フリマ百都市構想」を発表しましたが、これによって東京以外の地域において「文学フリマ」を開催することが提唱されて以降、その地域でしか生まれないような文化的土壌をより豊かなものにしていくという理念が、それぞれの地域ごとの特殊性という形で、少しずつですが実現してきているのではないかと、今回の「文フリ大阪」へのサークル参加を通じて思いました。

確かに、これまでの「振興センター」での開催は住宅街が近くにあるということから、近所の住民が散歩がてら寄ることができたという意味では、より素朴な意味で地域に寄り添っていたと言えなくもないでしょう。ですが、人々の往来が多い「OMM」は天満橋の周辺住民だけでなく、天満橋という駅を普段から利用している参加者が気軽に立ち寄ることができるというメリットがあったと言えます。このレポートはあくまでも私個人の感想であるため、次回の「文学フリマ大阪」の開催地が何処になるのか、あるいはまた別の場所になるのかは分かりません。しかし、個人的には雨に濡れずに頒布物の搬入ができる「OMM」での開催の方が、サークル参加側としては便利でありがたいと思いました。

◆コーナー配置について

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会場の様子。イベント終了時刻の17時まで多くの参加者が足を運んでいた。

次に、会場が変わったことで、見本誌コーナーや休憩用スペースといった様々なコーナーの配置も変わりました。もちろん、これは会場が変わる以上当たり前のことですが、今回の「文フリ大阪」では奥まったスペースを全て休憩用スペース(しかも外の景色が一望できる)にしたり、また見本誌コーナーを分散させたりと、かなり大胆な配置となっていました。「振興センター」開催の時には休憩用スペースは存在しておらず、また見本誌コーナーは会場内にあるステージ上の一ヶ所にまとめられていたため、この点でもレイアウトの工夫が感じられました。今回のコーナー配置については当会のブースを訪れた一般参加者さんや他のサークル参加者さんとも話題になりましたが、私が把握している限りでは、前者に関しては概ね好評であったと思われます。当日は生憎の雨模様でしたが、もしも晴れていれば「OMM」の北側に流れる大川を挟んで、対岸にある造幣局などの建物が綺麗に見れたでしょうし、気楽に座って飲食ができるスペースがあるのは、イベントをじっくり楽しめる仕掛けとして機能すると感じました。実際、当会はブースの目の前が休憩用スペースだったため、じっくりと戦利品を読み耽る人や、何人かで作品談義に花を咲かせていた参加者が多数見られました。

ただ、見本誌コーナーの分散については、あまり良い評判は聞こえてこなかったように感じました。当会のブースを訪れた一般参加者さんの中にも「読みたいサークルの本が何処にあるか分からない」と言っておられた方がおり、私自身も、中身を一度じっくり確かめたいと思ったサークルがありましたが、その本が置かれている見本誌コーナーを見つけるのにそれなりに時間がかかりました。こうした見本誌コーナーの分散は、「振興センター」の時のようにステージ上に沢山の人が集中し過ぎないように、あるいは見本誌を一ヶ所にまとめることで参加者の流れを堰き止めることがないように配慮された結果ではないかと私自身は考えていますが、なかなか判断が難しいところです。ともあれ、イベント全体として振り返った時に大きな支障を来すことなく行えたのは、やはり文学フリマ大阪事務局の皆さんのご尽力だと思います。

ちなみに、本日大阪事務局さんがTwitterで今回の参加者数を発表されましたが、今回の「文フリ大阪」は過去最高の1794人が参加されたそうです。実際、イベント終了時刻である17時まで参加者が途切れることはなく、終了時刻ギリギリまでブースを訪れる参加者さんがおられました。あと、これは個人的な感想ですが、「評論」カテゴリで出展していたサークルが前回(第五回)の24サークルから20サークルへと減少してしまっていたのは少し残念でした。しかし、そうした中でも参加者の方から「『アレ』って何ですか?」とツッコんでくれる方が数名いらっしゃったのはとても印象に残る出来事でした。当会は来年以降も「文フリ大阪」に参加予定ですが、今後も「文学フリマ大阪」の更なる発展に期待したいと思います。

[記事作成者:山下泰春]