【日本における家庭料理の商品化】あなたの「ペペロンチーノ」はどこから?【アレ★トーク(2)】


前回:【VtuberやVRの未来予想】ヴァーチャルのアレコレな話【アレ★トーク(1)】

〈アレ★Club〉のメンバーがGoogle Hangoutで行っている日々の雑談の中から、「一匙の公共性」がありそうなものを「さいむ」が勝手に書き起こし、他のメンバーのチェック無しで記事化する「アレ★トーク」。今回は、事務作業が煮詰まってきた3人が「ペペロンチーノ」についてやおら話し始めたのを慌ててまとめました。

★本日の登場人物
・永井光暁
・穂高周
・さいむ

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◆腹が減ったら何を食べよう?

穂高周(以下、穂高):
永井さん……かれこれ3時間くらい延々とメール書いたり電話かけたりと事務作業やってますが……今日って僕ら以外に誰も来ないんでしょうか……?

永井光暁(以下、永井):
まぁ、僕もだけど、皆ウチ(アレ★Club)以外に本業があるし、平日の日中に動けるメンバーの方が少ないから、こればっかりは仕方ないよ。面白いモノを作るためにはコツコツやっていくしかないから、動けるうちに動きましょう。

穂高:
まぁ、そうですよね。それにしても、お腹が空きました。よくよく考えたら、今日は起きてから何も食べてないから、今から朝食兼昼食でも作ります。あ、ハングアウトは繋げたままにしてますから、ご安心ください。

永井:
へいへい……そういや、東京でカレー会やって大阪戻ってから外食行ってないな。

さいむ:
外食なら私は昨日ファミレスに行ってきましたよ。ペペロンチーノ食べてきました。そういえば、穂高さんは何を作るんですか?

穂高:
奇遇にもペペロンチーノですね。今はニンニクをスライスしてます。

永井:
スライスもいいけど、僕ならニンニクはみじん切りにするかなぁ。

さいむ:
へー、どっちが美味しくなるんですか?

穂高:
どっちが美味しいということは……まぁ、ニンニクをスライスするのは具として食べたいからですね。みじん切りにするのは全体に味を馴染ませたい場合です。

永井:
ペペロンチーノというと、「乳化」させるかさせないかっていう問題があるね。

さいむ:
(あ……これは話長くなるな……メモっとこう)「にゅうか」ってなんですか?

穂高:
水と油を高温で熱して混ぜると分離せず混じり合う現象を「乳化」って言います。今永井さんが言ったのはペペロンチーノの具材にパスタの茹で汁を入れて乳化させるかさせないかっていうことです。僕は乳化させない方が好みですけど、永井さんは乳化させる派ですか?

永井:
乳化させたソースの方が好きかな。オリーブオイルが少な過ぎて焼きそばみたいになったり、あるいは茹で汁を入れ過ぎて水っぽくなってシャバシャバしたオイルパスタなんて食べたくないしね。あと、乳化以外にも塩をどのくらい入れるかでも意見が分かれるね。ちなみに僕はスパゲッティを茹でる時にだけ塩を使って、オリーブオイルと絡ませる時に塩は足さない派です。

穂高:
そこは僕も同意見ですね、どっちも塩味が強過ぎると味が単調になりますから。

◆「絶望のパスタ」

さいむ:
あの、オリーブオイルってペペロンチーノだと他のパスタにおける「ソース」の役割ですよね? だったら具材を炒めるのに塩を使ったりしないんですか? ベーコンとか、ズッキーニとか……。

永井:
具材ねぇ……そもそもペペロンチーノの正式名称である「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」という言葉自体がニンニクとオリーブオイル、それに唐辛子っていう意味だからなぁ。野菜を入れるにしても、せいぜいパセリとかバジルぐらいで、それも具材ではなくて色味としてになるね。

穂高:
ベーコンも個人的にナシかな……ペペロンチーノはシンプルな味がウリですから。

永井:
まぁつまり、ペペロンチーノって調理法がほぼ決まってるパスタなワケですよ。人によって意見は違うだろうけど、個人的にはペペロンチーノに具材を足してもあんまり美味しいとは思わない。ペペロンチーノを作る時はスパゲッティ、塩、ニンニク、唐辛子、それとオリーブオイルの味を味わいたいのであって、他の何かが食べたいワケではないしね。

さいむ:
へぇ……(この人たち、なんで料理にこんなにこだわりがあるんだ……)名前の由来自体だけは知ってましたが、ペペロンチーノがそんなにカッチリした料理とは知りませんでした。

永井:
「カッチリ」というより、ペペロンチーノの場合は「定式」がほぼ決まっていて、その完成度が高いから、下手に余計なことをすると不味くなるって感じかな。そういや、大学時代に飲み会があって幹事がイタ飯屋でコース料理頼んだんだけどさ、そこで「夏野菜たっぷり!具沢山のペペロンチーノ」ってのが出てきたのよ。もうね、「具沢山」って時点でペペロンチーノじゃないのに、さらに使ってるパスタがフェットチーネ(平打ちの生麺)だったんですよ。料理に罪はないけど、流石に作ったヤツに「これのどこがペペロンチーノなんですか?」って言ってやりたくなった。

さいむ:
(キレたぞこの人!)一応コース料理なんですから、具材もパスタも高いものを揃えたっていうことではないんですか?

永井:
いや、モノにもよるけど値段が高いパスタは日本人からするとあまり美味しくないことが多いんですよ。高いパスタって表面がザラザラしてるんだけど、あれはソースと絡ませるためなんだよね。でも、日本人には表面がツルツルしたシコシコしている食感の麺の方が好まれる。そして、こういう麺はオイルパスタと相性が良い。それに、ちゃんとソースが美味しくないと、高いパスタを使っても結局は美味しくないからね。だったら安いパスタでいいし、生パスタなんて使わずいっそ乾麺で問題ない。

さいむ
言い切った!

穂高:
そういう意味では、ペペロンチーノって本来はお金を取れないようなメニューですよね。日本で言う「素うどん」みたいなものですから。

永井:
まぁ、ペペロンチーノってイタリアでは「絶望のパスタ」って言われているぐらいの料理だしね。どんなに材料がなくてもパスタと少々の材料だけで作れる、言い方は悪いけど「貧乏人の料理」とさえ言えちゃうワケで。なので、イタリアのレストランではペペロンチーノって普通はメニューにはない。

さいむ:
あー……日本で言えば、ファミレスで塩おにぎり出すようなものなんですね。

穂高:
まぁ、塩おにぎりも今はコンビニで売ってますけどね(笑)

◆なぜ日本人は塩おにぎりを買うのか

永井:
たださ、それってよくよく考えると面白いことなんだよね。日本だとペペロンチーノが外食のメニューとして成立するし、塩おにぎりがコンビニの商品になるワケじゃないですか。シンプルな料理がファストフード化してる。

穂高:
なんていうか、便利の方向性がズレてますよね。「素朴で簡単な料理」っていうのは自分で作る時の手間を減らすためのものなのに、それが売り物になっているんですから。わざわざ外で食べないようなモノを外で売っているし、家でしか食べないようなモノをわざわざ外食で食べてしまう。

永井:
その話でいうと、マクドナルドなんかも例に挙げられるかな。マクドでは「朝マック」っていうモーニングサービスをやってるけど、実はあのエッグマフィンにコーヒーっていうメニューってアメリカの朝食そのものなんだよね。「朝マック」自体はアメリカでも行われているサービスではあって、日本と同じくホットケーキなんかもメニューに加わっていてかなりボリュームがある。ところが、これも“Big Breakfast”って言って、やっぱり向こうの朝食の定番なんだよね。日本では朝でもマクドナルドが食べられることが当初話題となったけど、アメリカではそのメニュー自体は極めて家庭的で普遍的なものだったってことです。なのに、日本では出勤したビジネスマンが「朝マック」を食べる風景をCMで演出していた。アメリカ本場でのイメージとは真逆でビジネスナイズドされちゃったんだよね。

さいむ:
なんで家で簡単に作れそうな料理が日本だと売り物になるんでしょうかね? 自分で手間を省くために作っていたものが、外で売り物になっててそれを買うのって矛盾してません? まぁ、私もファミレスでペペロンチーノを食べてるワケですが……。

穂高:
作った誰かの顔が見えないものであれば逆に食べられるっていうこともあると思います。作った人が誰か分かってしまうと食欲が落ちてしまうこともあるでしょうし、それで苦しんでいる人にとっては、コンビニやファミレスにおける調理人の匿名性が高い料理の方が好まれるんじゃないでしょうか。

永井:
あと、手間を省くために作ったものって、しばしば質素な見た目や味わいのものになりやすいよね。こうした食べ物が、たとえそれが売られたものであっても「」のメシ、つまりは普段食いのメシとして食べられることで「ハレ」のメシと差別化したり、祝いの時のメシをより特別なものにしたりしようとしているんじゃないかな。

さいむ:
なるほど……。

永井:
それに、コンビニって大体の商品を定価で販売してくれるから、実は売る側にとっては優しい場所なんだよね。今はコンビニの利便性を重視して安い商品、「ケ」のメシが大多数を占めているけど、今後は高級志向、つまりは「ハレ」のメシとしてより高い値段の商品も出てくるかもしれない。実際、既にクリスマスの時期なんかはケーキがコンビニに並ぶようになってるワケだし。

さいむ:
ペペロンチーノ一つから随分色々と見えてくるものなんですね、面白かったです。

穂高:
……事務作業は進まなかったですけどね。次のメールの文面を早く書き上げないと、今日中に終わりませんよ?

さいむ:
うわ、もう午後3時だぁ……コンビニでおにぎり買ってこよっと……。

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堀江くらは(今回不参加):
(主夫の)僕がいない時に料理の話をされてしまったので、オススメのパスタだけ紹介しておきます。あと、個人的には乳化は必須だと思います。手軽に作れるはずのペペロンチーノもインスタント食品になる時代ですが、皆様もたまには料理をしてみてはいかがでしょうか。新しい知見が得られるかもしれませんよ。

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[記事作成者:さいむ]