先日の12月8日(土)、当会こと〈アレ★Club〉主催のワークショップ「ものを書くための、読書会」Vol.19が、大阪・谷町にある〈ことばを食べるカフェ・みずうみ〉で開催された。今回は第二十七回文学フリマ東京後初の当会主催イベントということで、改めて大阪の地での新刊『アレ』Vol.5のお披露目会となった。今回の題材として選んだのは、本誌に掲載された難民氏によるエッセイ「ひとり暮らしの先に」である。そこで、今回は「『アレ』クリエイターズトーク」と称して、著者である難民氏も参加して、一緒にそのエッセイを輪読した。
この「ものを書くための、読書会」というワークショップは、集まった数名の参加者とともに「一人につき一段落」声を出して読んでいき、読後にその感想や疑問などを話し合うという、よくある読書会スタイルを踏襲しつつも、その後実際に文章を書いてもらうのが特徴である。特に今回は、難民氏のエッセイに違和感を覚えた参加者さんがいたこともあって、自然と議論や執筆のテーマも「難民氏のエッセイを寸評する」というものになった。また今回は、たまたま参加者が複数回このワークショップに参加しておられる方や、創作サークルに所属して文芸同人誌を刊行しておられる方が複数名おられたということもあって、後半の「書く」パートでは「文章を引用して論じてみる」というスタイルで文章を書いてという課題を設定した。
例えばある人は、難民エッセイで書かれていた「生活のむなしさ」について、自身の創作体験と比較しながら書いたり、またある人は、難民氏が考える「むなしさ」を「若さ」と読み替え、そうした「若い」人間の感性に驚きを覚えながら、自身の「発見」について記したりしていた。また、今回は主催者である私(山下)も、あらためて難民エッセイについて論じた。その趣旨を簡単に述べると、難民エッセイで描かれているのは、商品をただただ享受するだけの消費者の「生活のむなしさ」だけであり、そこにはそうした商品を元手に新たな価値を創造する「生産者」の視点が欠けている、というものだ。
だが、断っておくと難民エッセイには、こうした批判に耐えるだけの力がある。実際、ひとり暮らしを始めた難民氏の悩みとその解決策は、「アレ」なWork観について一定の視座をもたらしてくれるものであると私は確信している。また、小気味良いテンポで展開される彼のエッセイは、「エッセイ」の書き方について考える上で、形式面でも大いに参考になるだろう。もし手元に『アレ』Vol.5をお持ちの方は、この難民氏のエッセイ「ひとり暮らしの先に」を、是非章立てを意識しながら読んでみてもらいたい。
ともあれ今回の読書会を総括すると、著者である難民氏も、これらの指摘を受けて次の号に寄稿する原稿の内容も見えてきたようであったため、結果的には非常に内容の濃い回となったように思われる。
最後に、次回の「ものを書くための、読書会」Vol.20は2019年1月19日(土)19時から開催予定である。次回は翌20日(日)に私たち〈アレ★Club〉もサークル参加する第三回文学フリマ京都が開催されるため、「文フリ京都前日スペシャル」と題した企画を行う予定である。興味を持たれた方は、是非とも参加していただければ幸いだ。
[記事作成者:山下泰春]
〈アレ★Club〉代表。大阪大学大学院博士後期課程に在籍中。専門は戦後ドイツ思想の傍流だが、最近は色々と浮気しがち。動物(特に有蹄類)が好き。機関誌『アレ』から本サイトまで、〈アレ★Club〉の活動全般に関わる。
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