【ボードゲーム批評】『ポンペイ滅亡』:命の数は死体の数だ【盤面は語る(第3回)】

前回:【ボードゲーム批評】『カルカソンヌ』について:競争と人数【盤面は語る(第2回)】

読者諸君は「命の音」を聞いたことがあるだろうか?  心臓の音、呼吸の音……「命の音」は色々あるが、これらは身体の生命活動が音を立てているに過ぎず、機械がこれらの代替となれば違う音が「命の音」となる時代も来るだろう。そう考えると「命とは何か?」という根源的な問題が生じるわけだが、それは哲学の領域になるので専門家に任せて、今回もいつものようにボードゲームの話をしよう。

◆『ポンペイ滅亡』は「命が軽い」ゲーム

『ポンペイ滅亡』は命の音が聞こえるゲームだ。それも、命が失われる物悲しい音が。

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このゲームは『カルカソンヌ』の作者が製作したゲームだが、『カルカソンヌ』が希望溢れる発展ゲーなら、このゲームはタイトル通り絶望しかない滅亡ゲーだ。

本作は2つのフェイズに分けられる。1フェイズ目はポンペイを発展させるフェイズで、2フェイズ目の架け橋的な存在だ。

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ルール無視で駒を置いたが、ポンペイ市民はこんな感じで増えていく。左上に不穏なものがある? なにが?(すっとぼけ)

このフェイズでは、プレイヤーはカードの指示に従って人の駒を街のいたるところに置いていく。人が既にいる区画に新しく人を置くことで、さらに追加の人を呼び込むことができる。人と人の繋がりが新しい縁を呼び、人口は逓増していく。

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こうしてポンペイは滅びていくのだ……

が、そんな幸せな発展の時期にも終わりが訪れる。パッケージとゲームのタイトルを見れば分かるだろう。そう、第2フェイズでは火山が噴火し、ポンペイの住人は逃げ惑い、マグマが人を飲み込んでいく。より多くの人間を滅びゆくポンペイから逃がしたプレイヤーが勝利するという訳だ。

このゲームでは、人の駒を多く配置できたプレイヤーが必然的に有利になる。残酷だが「死なせてもいい人間」が多いからだ。それに人の駒は他の駒を踏み台にすることで多くのマスを進むことができる。弱肉強食、「俺のためにお前は死ね」と生き延びるために縁があった人間でも容赦なく見捨てていく。

そして、このゲームでは溶岩に飲み込まれた駒は火山に投げ込まれる。「カラン……」と乾いた音がする。これが人間の命が失われる音というわけだ。ゲームをプレイしていると、この音の軽さについつい笑ってしまう。不謹慎かもしれないが、このほどよい残酷さがゲームの味として機能している。

◆「人の命」はコストだ

本作は一種の「バカゲー」に分類されるが、学べることも少しだけある。現実世界でもボードゲームでも「人口は力」だが、多くのゲームはそのコストを無視している。『ポンペイ滅亡』もそうしたゲームの1つだ。第1フェイズで人間を増やすほど、終盤で逃がせる人間=得点を稼ぎやすいが、食料や住むための家といった多くのゲームに存在する人口の維持にかかるコストは一切ない。

それどころか、死んだとしても最終得点が下がるだけで、別にその他のデメリットを被るわけでもない。こういう意味でもこのゲームは「人の命が軽いゲーム」である。

しかし、現実世界ではそうではない。「人の命」は重いか・軽いかに関わらずコストがかかる。人口が増える程食料と家が必要だ。経済レベルで見れば、仕事がないと失業者も増えてしまう。死んだあとだって埋葬にはコストと場所がかかってくる。

現代では、納骨したくても出来ない「納骨難民」なる言葉まで存在している。遺族に金銭的余裕が無い場合や、そもそも遺族がいない場合に多い。都市部の墓不足などがその原因だ。人口ピラミッドを見る限り、今後こうした「死後の問題」は益々深刻になっていくだろう。

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こうした現実世界の問題を、「ポンペイ滅亡」は考慮しない。増えた人間はプレイヤーの関与できないところで生活をし、死んだとしても死体は溶岩が流してくれる。プレイヤーも埋葬などせず、火山に駒を投げ込むだけだ。

このゲームでは命が軽いが、せめて逃げ延びたかつてのポンペイ市民には、死後の埋葬地くらいはあってほしい。できることなら、幸せな人生をおくってくれ。そう願うわけもなく、駒を火山に投げ込みながら、我々プレイヤーは「笑う」のだ。

最後に、人の命の音をお楽しみください。

[記事作成者:堀江くらは]

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