「廃校」と「不登校」から見えてくる、校舎の未来の姿とは?


◆「廃校」という学校教育の変化

先日、このような記事をネットで見かけた。

この秋行きたい“廃校グルメ”

これは文科省が始めた廃校を有効活用するためのプロジェクトで、飲食店として流用するなど方法で廃校の約7割を有効活用しているという。文科省のHPでも概要を確認することができる。

~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト

一見して明るいニュースのように見えるが、気になるのはプロジェクトの原因となっている廃校そのものについてである。現在、日本では少子化による影響で年間約500校が廃校になっている。時代の変化に伴い、地方の校舎がその本来の役割を失いつつあるのである。学校は主要科目の授業を行う以外に、その時代において児童・生徒に求められる資質・能力を育てる役割もある。その児童・生徒が減少しているのなら、それに合わせて学校の形態そのものも変化していく必要も少なからずあるだろう。

◆校舎にいない「出席」~「不登校」に対する配慮~

それを示す事例がもう一つ存在する。

<文科省>「ネットで授業」も出席扱い 病気・けがの小中生

奇しくも本記事において最初に紹介した記事と同じ日に公開された記事である。病気や怪我によって長期入院や自宅療養をしている小中学生が、インターネットによる「遠隔教育」を受けた場合でも出席扱いにすると文科省が認めたのだ。これの意味するところは、つまり児童生徒が登校できず校舎を半ば利用できない環境下でも、等しく学校教育を受けられる状態を作る必要があると文科省が半ば認めたということだ。この取り組み自体は不登校の児童生徒を対象に以前からも検討されていたものでもある。昨年2月にいわゆる「教育機会確保法」が施行されたことで、学校に行くことのできない児童生徒に配慮して学校教育を変化させていくことになったのだ。

ネットを使った不登校児支援、自治体と連携相次ぐ 登校せずとも出席扱いに

◆校舎を超えた学校教育の形

少子化による校舎の減少と、そもそも校舎に来られない児童生徒に対する学校教育の実施。これらをやや乱暴に繋げて考えてしまうのであれば、あるいは校舎という存在そのものが、これからの学校教育においては半ば必要とされなくなってきている、とさえ言えてしまうだろう。スマホを介して受講生に授業を配信する、いわゆる「ネット塾」の発展もこの流れに影響を与えていることは想像に難くない。

勿論今筆者が述べたことはあくまでも暴論ではある。生徒に生の体験を届ける、特に体育や家庭科等の授業を代用できるほどインターネットによる授業配信は発展していないし(そもそもが受験対策として塾が発展してきた以上これらの授業に対する取り組みが後手に回るのは当然とも言える)、廃校に反対する卒業生在校生の声は途切れることが無い。ネット塾においても、講師が直に授業をする特別講座が逆説的に生徒から人気を博しているケースもある。それでも、学校教育が近いうちにより大きな変化を迫られる可能性はあるだろう。少なくとも、児童生徒を取り巻く諸問題に対して学校教育が誠実であり続ける限りにおいて、校舎という四角い箱の中でのみ授業をし続ける形態はその限界を露呈しつつあるのだ。

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[記事作成者:さいむ]